

株式会社リクルートの組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て、2000年に経営コンサルティング会社・リンクアンドモチベーションを設立。やる気を高める独自技術「モチベーションエンジニアリング」を駆使し、強い個人・強い企業創りへと導く。キャリアスクール「i-Company」の監修も。

自分自身を振り返り、客観視する機会って、普段はなかなかありません。多くの人は、単なる過去の習慣にしたがって日々を生きていると思うのです。言い方は悪いですが「惰性」ですよね。けれども、それでは成長や発展は望めません。そこで意識的に、自分の中に蓄積された経験、つまり「エピソード」をいったん外に出して、「棚卸し」することが大切。それが、自身の強み・弱み、他者と異なる独自性に気付くきっかけになる。生かすべきポイント、克服すべきポイントが認識できるわけです。
不遇な状況にあるとき、他人のせいや環境のせいにしてしまいがちですよね。でも本当は、過去に自分が行ってきた選択の積み重ねが、その状況を作っています。ということは、これからの選択によって、そこから抜け出し、自分を変えることはできるのです。だからこそ、正しく、自分らしい選択をするための「基準」を明確にしておく必要があります。選択肢が豊富な時代だからこそ、自己責任意識を伴った選択基準を定める。そのために有効な手段が、過去のエピソードの整理なのです。
自分のモチベーションを維持したり、高めたりするのにも、エピソードは役立ちます。「こんな達成感を味わった」「こんなピンチを見事に乗り切った」など、成功体験のエピソードを持っておいて、ノートにでも書いておく。そして、落ち込んだときなどに、そっとそれを取り出して眺めるのです。時には、自分で自分を認めてあげるのも、人間には必要なことだと思いますよ。そんな時には、プラスのエピソードを利用して、今の自分を励まし、背中を押してやってください。きっと元気が出て「また頑張ろう」と思えるはずです。

エピソードを、他者と共有するのも有意義なことですね。自分が経験していないことでも、他者のエピソードから学ぶことができるからです。自分が経験できることなんて、限界がある。ましてや、若手社会人ならなおさらでしょう。先輩や上司、他の人のエピソードからヒントを得て、それまで意識していなかった、自分が持っている素晴らしいエピソードに気付くこともあるはずですし。
話がずれるかもしれませんが…経営者の立場として、社員採用を行う際は、面接で必ず「壁を乗り越えた経験」をたずねます。誰にでもつらく苦しい経験はあるわけで、そこで逃げずに向き合ってきた人、「いい機会」だと成長の糧としてきた人は、話していても楽しい。ともに何かを創り上げていくとき、障害を乗り切っていけるような気持ちになれるのです。仲間として求めるのは、そういう人です。
実は私自身も、過去の苦難や凹んだときのエピソードをパソコンに保存してあります。人には絶対見せられませんが(笑)。でも、そういうものを記録として残しておくと、好調なときも慢心せずにいられるし、同じような状況に陥ったときにも冷静に対処できます。普通なら忘れてしまいたいようなマイナスの経験であっても、実はとても役に立つのです。ですから、どんなことであっても、経験したことはエピソードとして残しておくことをオススメしますよ。
あくまでここにあげたのは一例ですが、こうした視点で、そのときどきの自分を思い返して、エピソードとしてまとめておくと、自分自身が大切にしたいと考えている「軸」が見えてくるはずですよ。