

株式会社リクルートの人事部採用担当として、1万人以上の学生を面接。99年に、採用プロセス設計のコンサルティング、面接をはじめ採用実務の代行サービスを行う会社を設立した。『面接官の本音 2008』(日経BP社)『採用力のある面接 ダメな面接官は学生を逃す』(NHK出版)などの著書も持つ、面接のプロ中のプロ。

私は、今まで多くの学生や、転職希望者との面接を行ってきました。そんな中での経験から言うと「コミュニケーション力」「傾聴力」「分析力」「思考力」といった資質は、面接の中での会話の中で、わりとつかめますね。しかし、それ以外の資質や能力──例えば「忍耐力」「集中力」「持続力」などは、面接の場での会話の中では見えにくいのです。そうした力を、自分の強みとしてアピールしたいならば、裏付けとなるエピソードを話せるように、用意しておくことが大切ですね。
相手が「面接のプロ」ならば、巧みな会話スキルを駆使し、面接を受ける人の持ち味をうまく引き出してくれるでしょう。ところが、実際の面接は、営業や技術部門の現場担当者など、面接に慣れていない人が担当することもある。その場合、面接担当者の質問の仕方が悪くて、応募する人たちの魅力を引き出せないこともあるのです。結局「よくわからない人だな」で終わる恐れも。だからこそ、エピソードを整理し、わかりやすく自分から伝えられるようにしておくべきなのです。
エピソードをまとめておけば、話に抜け漏れがなくなるのと同時に、臨場感が生まれます。例えば、面接でこれまでの仕事経験を問われたとき、「***の業務を担当していた」というだけでなく「どのような進め方で、どんなことを考えながら業務を行っていたのか、どんな工夫をした結果、どんな成果を挙げられたのか」まで伝えられます。面接担当者にとっては、応募者の仕事ぶりが具体的にイメージできることによって納得感が高まり、印象や評価アップにつながりますよ。

異業種への転職を目指す場合は、特にエピソードが重要になりますよ。前職と応募先の職種が表面的には全く異なる仕事であっても、交渉の進め方や顧客への対応の仕方など、共通点がある場合も少なくないのです。まずはそれを発見するために、自分で前職において経験した様々なことを、エピソードとして整理する。その上で、共通点を応募する企業に納得させるために、具体的に話せるようにしておくことが肝心です。相手も「この人ならできそうだ」と思ってくれるはずですから。
新卒の面接で、「業務効率を上げるために改善をすることが得意」という女性がいました。具体的にたずねてみると、ファストフードでアルバイトをしていたとき、店のオペレーションの効率化を図るために、キッチン内の備品の配置を変えた経験を話してくれました。彼女は、鍋や調味料の並び順から、どんな理由でどのように位置を変えたのかまで細かく説明してくれたので、こちらもイメージができて「本当に自分自身で考えたことだな」と、彼女の「改善力」について納得しましたね。もちろん、採用しました。
一方で「リーダーシップがあります」と話す男子学生がいました。根拠を聞くと、「高校時代からの友人と3人でサークルを作った。飲み会や旅行の手配・精算など、全て自分がやっていた。」とのこと。だからリーダーシップが…と話すのですが、「それは雑用係では?」と思ってしまいましたね。エピソードを持っていても、アピール目的とずれていては意味がありません。他者のエピソードとも見比べつつ、エピソードを練っていく必要があります。
面接での短い時間でも、話がよく伝わる人と、そうでない人がいます。伝わる人とは、話の背景がイメージできる人です。例えば、「ぼくは高校時代にラグビー部のキャプテンをやっていた〜」という前置きと「ぼくは高校時代にラグビー部のキャプテンでした。県でベスト8に入る強さで、部員が100人いて、練習も厳しかった〜」という前置きでは、明らかに後者の方が、風景や状況をイメージしながら聞けますよね。話がすんなりと入ってくると心地よく、納得感も高い。自分の魅力を伝えるためには、そういう部分も大事にするべきでしょうね。