

株式会社リクルートにて、人材開発、ガテン事業企画、情報と流通のシナジーを目指す『暁の 駱駝プロジェクト』創設。コンビニ放送局開局、コンビニECマガジン創刊など、数々の新事業立ち上げに従事。2001年、リクルートエージェントへ。サイト編集長などを経て「i-Company」 を創設し、「キャリア創り」の考え方や手法を伝えている。現在、採用にも携わっている。

僕が校長を務めている「アイカンパニー(i-Company)」は、「自分のキャリアを自分で創る」をテーマとしています。キャリアをどう構築していけばいいかというと、一般的にいうところの「テクニカルスキル」を磨くことが大事だと考えている人が多いようです。つまり、業務をこなすための知識や経験、資格などが、世の中では評価されるものだと思われがちです。確かに、そういう一面もある。ところが、それ以上に注目されることが多いのが、次のような「ポータブルスキル」なんです。
例えば、大きなプロジェクトや新規事業の立ち上げなどにあたり「誰に任せればいいか?誰ならやり遂げられるか?」「どんな人を採用すればいいか?」といった場面では、ポータブルスキルが重要な判断材料となります。あなたにその力があることを周囲の人が正しく認識・評価していれば、黙っていてもいずれチャンスは巡ってくるでしょう。しかし、自分から「その力がある」と発信することで、やりたい仕事やポジションをつかめる可能性は高まります。そのポータブルスキルを「裏打ち」するのがエピソードなのです。
42歳にして、PCに詳しくもないのにWebサイト編集長に就任。44歳にして、教育のプロでもないのにスクールの校長に就任……これ、私自身の体験です。この年齢で全く未経験の仕事に挑戦し、経験の幅を広げられるなんて、なかなかないよ、と思います。こうしたチャンスを得られたのは、自分が持っている「ポータブルスキル」を他の人が理解できる「エピソード」があったからだと、今になって実感しますね。エピソードは、積み重ねることによって新しいキャリアへの扉を開くカギになり得るのです。

そもそも私がリクルートに採用された理由。それは、「場の空気を読みながら、さまざまな人を巻き込み、その気にさせ、盛り上げる力がある」と思われたからだそうです。当時学生だった私は、リクルーターと(大阪)北新地のクラブに行った際、アクション付きで歌いながら他のテーブルをまわり、最初は引いていた人まで巻き込んで、最終的には店内に一体感を作った。このエピソードが、その評価につながったと聞いています。入社後、様々な事業にかかわって、新しいエピソードを作った。その原点は「学生時代の逸話」にあったわけです。
私自身が新たな発見をして、成長するきっかけとなったエピソードを2つご紹介します。1つ目は、学生時代に女性の少ない環境で過ごしてきた僕が、30歳で初めて女性に声をかけたときのこと。上司と飲みにいったとき、近くに座っている女性達に「一緒に飲もうと誘え」と言われて……。かなり迷ったのですが、勇気を出して声をかけたところ、あっさりOK。向こうもこちらに興味を持ってくれていたようです。自分中心で考えていても仕方ない、相手にもニーズがあるかもしれない。それを実感してから、積極的に人に声をかけることが多くなりましたね。
もう1つは、リクルート在籍時代、マネジャーの定例会議での体験。広報課長の「イベントにボン・ショヴィが来ます」という報告に対し、その場は「ほぅ、ボン・ジョヴィが」と自然に流れていったのですが、ひょんなことから、実は、出席者の誰1人、ボン・ジョヴィを知らないということがわかった。社会には、知ったふりして見過ごしていくことが多いものだな、と学びましたね。以来、理解できないことは、その場で「わからない」「それは変じゃない?」と言うようにしていたら、課題が早く見つかるようになりましたね。
私が採用面接などで聞くのは、これまでの経験の中で「一番大変だったこと」「つらかったこと」「打ち込んだこと」などです。本当の自分が表れやすい場面だと思いますので。エピソードを整理する「軸」もここにあるのかもしれません。あと、細かいことでもいいので、とにかく数をたくさん書くのも有効。エピソードが多ければ、「こちらの方が伝わりやすいかも」などと比較してみることや、「これは混ぜて話すとわかりやすい」といった工夫ができますから。エピソードを話す相手や場面によって、最適なものを選び出すことも可能になりますよ。